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2017年05月05日

ナスカンにまつわる謎 その3 軽機 百短編

「ナスカンの謎 その3」としまして、今回は軽機 百短編としてレポートしたいと思います。

今回の謎はズバリ、「ナスカン付き負い紐」は軽機や百短に装着されたか?に迫ります。・・・装着されたか?というより銃器の負い紐として正式制定されたものなのか否か?を考察します。
ナスカンにまつわる謎 その3 軽機 百短編
↑前回も紹介しました負い紐です。「綾テープにナスカン」というこの組み合わせは割と数多く存在しますね。

ではこの「綾テープにナスカン」という組み合わせの負い紐は、軽機や百短の正式な属品の負い紐として存在したのでしょうか??

結論から言いますと「否」、であるということになりそうです。

ではなぜ「否」なのか?先ずは軽機から見ていきましょう。
ナスカンにまつわる謎 その3 軽機 百短編
↑こちら言わずもがなの軽機にナスカン付き負い革の組み合わせ。ナスカンの装着方向に注目してみてください。↓
ナスカンにまつわる謎 その3 軽機 百短編
↑ナスカンはこの向きに装着するのが正しいです。↓
ナスカンにまつわる謎 その3 軽機 百短編
↑この様にナスカンは銃の外側から引掛けるようにして装着するのではなく、内側(銃側)から引掛けるようにして装着します。
ナスカンにまつわる謎 その3 軽機 百短編↑この様に装着するのは間違いです。
ナスカンにまつわる謎 その3 軽機 百短編↑こっちの向きが正しいです。何故なら・・・↓
ナスカンにまつわる謎 その3 軽機 百短編
↑九六軽機取扱法にも記されているからです。

しかし嗤うなかれ、セカンド木村もご指摘を受けるまで、このナスカンの向きには全く無関心でした・・・(恥

よし、ナスカンの向きは分かった。それを是とするならばナスカン付き負い紐はどうか・・?↓
ナスカンにまつわる謎 その3 軽機 百短編
↑実物のナスカン付き負い紐。これを軽機に装着してみましょう。↓
ナスカンにまつわる謎 その3 軽機 百短編
↑取扱法に従い、ナスカンを銃側から引掛けるようにして取り付けます。↓
ナスカンにまつわる謎 その3 軽機 百短編
↑この様になります。・・・ん?よ~く見ますと・・・↓

ナスカンにまつわる謎 その3 軽機 百短編
↑ありゃりゃ、尾錠の向きが・・・↓
ナスカンにまつわる謎 その3 軽機 百短編
↑この尾錠の向きでは身体部に干渉してしまう可能性があります。
うーん、この部分を確認しただけでも、ナスカン付き負い紐が軽機用負い紐であった可能性は低い。
一方こちら↓ナスカンにまつわる謎 その3 軽機 百短編
↑三八式小銃に装着されたフック式金具が付いた負い紐。↓
ナスカンにまつわる謎 その3 軽機 百短編
↑実物負い紐です。支那事変の大量動員時に支給されたというこの負い紐ですが・・・↓
ナスカンにまつわる謎 その3 軽機 百短編
↑この負い紐、計測してみますと厚みがほぼ4.0ミリと、負い革に準じた厚みを持たせていることが分かります。
ナスカンにまつわる謎 その3 軽機 百短編
一方、ナスカン付き負い紐の厚みは2.0ミリ強といったところ・・・。

・・・小銃より約3倍は重い軽機関銃にこんなペラペラな綾テープを属品として付するということは・・・やはりあり得ないですよね。


続いて、百短を見ていきましょう。
ナスカンにまつわる謎 その3 軽機 百短編
↑前回も紹介した実物「ナスカン付き負い紐」です。長さ調整に「駐環」という特殊な形状をした金具が付いています。↓
ナスカンにまつわる謎 その3 軽機 百短編
↑念のため記しておきますと、軽機取扱法にはこの組み合わせが記されています。軽機弾倉嚢とナスカン付き負い紐(長さ調整は「駐環」)。
ナスカンにまつわる謎 その3 軽機 百短編
↑このナスカン付き負い紐(駐環タイプ)は米国でこの状態でコレクターの手に渡っていたとのこと。
・・・それではこれが制式なのか?
やはり「否」である、と言えます。
その詳細を兵器学教程から見てみましょう。

負革 上端をつずみぼたんに依り下帯負革止に装着し下端になす環を付して床尾負革止に装着す
    なす環は負革の脱着を容易ならしむるものにして体、止金、ばね及軸より成り体、止金及ばねは軸により結合せらればねは止金を内方に押して床尾負革止に装着す

・・・とあります。
以上を読む限り、ナスカンは床尾側にのみ使用し、下帯へはつづみボタンを使用するように記していることが分かります。
百短の負い革はナスカン1個だったんですね。しかも「・・・内方に押して・・・装着す」とそんな説明要らんだろ!とツッコミを入れたくなるくらいに馬鹿丁寧です。

と、ここでさらに疑問が湧いてきます。
下帯へはつづみボタンで装着せよと言うならば・・・↓
ナスカンにまつわる謎 その3 軽機 百短編
↑これを見よ!スリングスイベルのベルト巾はどう頑張ってみても20ミリ前後。従来通りの30ミリ巾のベルトは通りそうにない。

須川様の著書に百短のスリングスイベルのサイズを細かく記載されていましたが、やはり30ミリの負い革は通りそうにありません。

このスリングスイベルに通りそうなベルトは18ミリか21ミリ。アジ歴には革条としてそれ以外の規格も確認できますが、陸軍は大正時代(だったと思う)に尺貫法からメートル法に表記を改めたため、大体この18ミリか、21ミリに収まりそうです。(18ミリ→21ミリ→24ミリ・・・→30ミリ、と3ミリおき)。

若しくは・・・30ミリ巾のベルトでつづみボタン付近で先細りとなり、18~21ミリ巾となった負い革が存在したか?とも考えられます。

ナスカンにまつわる謎 その3 軽機 百短編
↑ベルト巾 左から30ミリ、21ミリ、18ミリ。
ナスカンにまつわる謎 その3 軽機 百短編
↑当然ですが、巾30ミリは通りそうにありません。ナスカンにまつわる謎 その3 軽機 百短編
↑21ミリでしたら斜めにすれば何とか入る感じです。しかしつづみぼたんで留めて折り返した時にはシワが寄ります。ナスカンにまつわる謎 その3 軽機 百短編
↑18ミリだとストレスなく通ります。
最も上記三例はモデルガン対象なので何とも言えません。飽くまで参考程度です。

超有名な中田本「大日本帝国陸海軍 軍装と装備」には米軍に鹵獲された百短の写真が掲載されていますが、その内の一枚にベルト巾の細い負い革が装着された百短の写真があります。・・・もしかしてコレ!?と思ったのですが、残念。この写真にはナスカンが2個付いています。

以前にヤフオクで21ミリ巾と思しきナスカンと負い革を落札し損ねたことがあります。
その時は、
「フン、どーせこんなの亜流さ」
くらいに考えていたのですが、これがもしや百短の属品だったら?・・・と考えるともう少し頑張っておけばよかったと後悔してます。
ちなみにその21ミリ巾と思しきナスカンと負い革は中田本「軍装と装備2」に十一年式軽機属品として紹介されています。

ここで総括。
ナスカン付き負い紐は軽機や百短の負い紐としては正式な属品ではない、ということになりそうです。

では、ナスカン付き負い紐の正体は??
・・・軽機弾倉嚢負い紐でしょう、多分。

戦地に於ける例外、規格外、不文律は当時写真が示す通りで、南方方面では皮革ベルトは高温多湿にやられやすいく、とって代わられたのがナスカン付き負い紐。それが米軍に鹵獲後本国へ渡り、その組み合わせが正しいとされた・・・といった可能性も考えられます。

しかし工房では、軽機弾倉嚢の負い紐のみに特化した場合あまり需要が見込めないので(笑)、「汎用負い紐」として販売します。↓
ナスカンにまつわる謎 その3 軽機 百短編
↑軽機弾倉嚢負い紐 鉄製ナスカン 汎用負い紐(軽機、百短用)
価格は¥12800です。追々商品としてUPします。

もちろん↓
ナスカンにまつわる謎 その3 軽機 百短編
↑百短負い革も販売します。こちらはまだ詳細調査中です。

さて、締まりのない文章を最後までお読みくださいまして有難うございました。上記レポートは今後改編する可能性があります。

次回は九九式短小銃迫ります。

でくの房@セカンド木村




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Posted by でくの房  at 16:32 │Comments(0)資料品の紹介

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